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last virgin

フジとまぁ。同棲して四年の年の差カップル。まぁ。は解離性同一性障害の闘病中です。その為、それに関した記事も多くなります。普段は仲良く2人で生きています。そんなこともブログに書けたらいいな。Twitterしてます→Lastvirgin28

short story「狡い人」

何も考えたくないと言った。
私は彼女が静かに呟いたのを聞かないフリをした。
この店で分かりやすい慰めの言葉など嘘だとバレてしまう気がしたし、何よりそこまで思わせてしまったのは私が原因な気がしてならなかったという後者の思いの方が強かったのだろう。
私の思い過ごしかもしれないが、その時はそんな気がしてならなかったのだ。
四人席のテーブルで隣同士に並んでいると顔色を見ることは出来ない。
私は顔が見えないのを良いことに言葉を紡いで繋げることはしなかった。
コーヒーを飲みながら、彼女が呟いた言葉を頭の中で反芻させる。
「何も考えたくない」
またコーヒーを飲む。
「なにもかんがえたくない」
またコーヒーを飲もうとしたが、カップの中には何も入ってなかった。
彼女のカップも見れば空っぽだった。
どうやら私は追想していて時間はとうに過ぎていたらしい。
タイミングを見計らっていたように、「さあ、出ようか」と彼女はさっきまでの弱い声ではなく、いつもの優しい声と笑顔で席を立った。
「ああ…うん」
私は彼女の後ろ姿を追うように歩いた。
見慣れた後ろ姿を私はまっさらな気持ちで、目を閉じて開いて、もう一度見つめた。

そうだ、さっきの言葉は彼女が初めて吐いた弱音だったのではないだろうか?

上っ面だけの慰めではなく、本当の言葉で私も伝えるべきではなかったのだろうか。
私たちは二人だけで生きるために真夜中を駆け出した共犯者だったのだから。

喫茶店を出ると、外は強い風が吹いていた。
やはり彼女の後ろ姿はいつもと同じに見えた。私の手を取り、前を走ってくれた時と同じように。
「ねえ」
「なあに?」
「わたし、貴女が好きよ」
顔は見えない。
けれども、頼りにしていた後ろ姿が小さく震えた。
そして振り返る。
「馬鹿ねえ、知っているわよ」
彼女は小さく笑った。






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まぁ。です。
短編小説?short story?書いてみました。
たまに書いても良いでしょうか?

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